ギグワーカーが知るべき確定申告のライン:いくら稼いだら申告が必要か
ギグワーカーとして活動を始めたばかりの皆様にとって、税金や確定申告に関する疑問は尽きないことと存じます。特に「いくら稼いだら確定申告が必要になるのだろうか」という点は、多くの方が抱く不安の一つではないでしょうか。この疑問を解消し、安心してギグワークに集中できるよう、確定申告が必要となる所得の基準について、分かりやすく解説します。
ギグワーカーと確定申告の基本的な考え方
日本に住むすべての方は、収入に応じて税金を納める義務があります。この税金を自分で計算し、国に申告・納税する手続きが「確定申告」です。ギグワーカーとして報酬を得ている場合、その収入は原則として「事業所得」または「雑所得」に分類され、所得税の対象となります。
しかし、全ての収入に対して確定申告が必要になるわけではありません。国が定めている一定の基準額を超えた場合に、確定申告を行う義務が発生します。
「所得」を正しく理解する:収入と経費の違い
確定申告が必要かどうかを判断する上で最も重要なのが「所得」という概念です。初心者の皆様が混同しやすい「収入」と「所得」は、以下のように区別されます。
- 収入: ギグワークを通じて得た報酬の総額です。例えば、プラットフォームから受け取った金額の合計がこれに該当します。
- 所得: 収入から、ギグワークを行う上でかかった費用(経費)を差し引いた金額です。
計算式:収入 - 経費 = 所得
この「所得」の金額によって、確定申告の要否が決定されます。
ギグワーカーにとっての「経費」とは
経費とは、ギグワークを行うために直接的または間接的にかかった費用のことです。例えば、以下のようなものが経費として認められる可能性があります。
- 通信費: 業務で使用したスマートフォンの利用料、インターネット回線費用など。
- 交通費: ギグワークで移動にかかった電車代、バス代、ガソリン代など。
- 消耗品費: 業務で使用する文房具、インク、バッテリーなどの日用品。
- 事業用家賃・光熱費: 自宅の一部を事務所として使用している場合の家賃や電気代の一部。
- クラウドソーシング手数料: プラットフォームに支払う手数料。
これらの経費を漏れなく計上することで、所得を適正に計算し、結果として納める税金を抑えることができます。領収書や記録を大切に保管することが重要です。
ギグワーカーが確定申告すべき「所得」の基準
では、具体的にいくらの所得から確定申告が必要になるのでしょうか。ギグワーカーの状況によって、以下の二つのパターンに分けて考えることができます。
1. 会社からの給与所得がなく、ギグワークが主な収入源である場合(専業ギグワーカー)
この場合、ギグワークによる所得が年間48万円を超えると、確定申告が必要になります。
この48万円という金額は、すべての人に適用される「基礎控除」というものが関係しています。基礎控除とは、所得税を計算する際に所得から一律に差し引かれる金額のことで、令和2年(2020年)以降は原則48万円です。つまり、所得が48万円以下であれば、基礎控除によって所得税が計算されなくなるため、確定申告の義務は基本的に発生しません。
例: * ギグワークの収入が年間100万円 * 経費が年間30万円 * 所得は 100万円 - 30万円 = 70万円
この場合、所得70万円は基礎控除48万円を超えるため、確定申告が必要です。
2. 会社からの給与所得があり、ギグワークが副業である場合(副業ギグワーカー)
この場合、ギグワークによる所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。
会社員として給与を得ている場合、通常は会社が年末調整を行うため、個別の確定申告は不要です。しかし、給与所得以外の所得が20万円を超えると、ご自身で確定申告を行う義務が発生します。これは、給与所得以外の所得に対する税金を計算し、国に申告する必要があるためです。
例: * 会社からの給与収入が年間300万円 * ギグワークの収入が年間50万円 * ギグワークの経費が年間15万円 * ギグワークによる所得は 50万円 - 15万円 = 35万円
この場合、ギグワークによる所得35万円は20万円を超えるため、確定申告が必要です。
所得の計算を正確に行うことの重要性
確定申告の義務があるかどうかを判断するためには、ご自身の所得を正確に計算することが不可欠です。日々の収入と経費を記録し、年末に集計する習慣を身につけることをおすすめします。
- 収入の記録: ギグワークプラットフォームの支払い履歴、銀行口座の入金記録などを活用します。
- 経費の記録: 領収書、レシート、クレジットカードの明細などを保管し、何のための費用であったかをメモしておくと良いでしょう。
これらの記録は、いざ確定申告をする際にも非常に役立ちます。
確定申告をしないとどうなるか
もし確定申告が必要な所得があるにもかかわらず申告を怠ると、以下のようなペナルティが課される可能性があります。
- 無申告加算税: 期限内に申告しなかった場合に課される税金です。
- 延滞税: 納めるべき税金を期限までに納めなかった場合に課される税金です。
これらに加えて、住民税の計算にも影響が及びます。税務署から指導を受ける可能性もありますので、適切な時期に適切な申告を行うことが重要です。
まとめ
ギグワーカーとして活動する上で、確定申告は避けて通れない大切な手続きです。特に「いくら稼いだら申告が必要か」という基準は、ご自身の状況(専業か副業か)によって異なりますので、正確に理解しておくことが肝要です。
- 専業ギグワーカー(給与所得なし): ギグワークによる所得が年間48万円を超える場合。
- 副業ギグワーカー(給与所得あり): ギグワークによる所得が年間20万円を超える場合。
この基準を参考に、ご自身の所得を計算し、確定申告が必要かどうかを確認してください。不明な点や不安なことがあれば、税務署や税理士などの専門家に相談することもご検討ください。早期に準備を始めることで、安心してギグワークに臨むことができます。